「自分の部屋だけ」じゃ済まない!?民泊申請の最大の難所・消防法と間取りの罠

行政

皆さんこんにちは、行政書士の鈴木です!
前回の【建築基準法・建物設備編】に続き、コラム第3回目を迎えることができました。読んでいただきありがとうございます。

前回はこちら↓

前回は「申請面積200㎡の壁」や「4m接道」など、建物の基本的なスペックについてお話ししました。これらをクリアして「これでバッチリ!」と思いたいところですが、民泊や旅館業を開業する上で、全プレイヤーが最も頭を悩ませる最大の難所がまだ残っています。

それが、今回お話しする「消防法」です 。

消防法は、担当する消防署や担当者によって条文の解釈が微妙に異なることもあり、まさに実務における「魔境」とも言える部分です 。ですが、ここを無視して物件を契約してしまうと、後から数百万円単位の予想外な工事費用が発生し、事業計画が根底から崩れてしまうことも珍しくありません

今回は、先日のセミナーでも特に質問が多かった「自動火災報知設備の連鎖」や「オシャレな間取りに潜む罠」、そして万が一のときの対応策について、前回のセミナー資料など用いて分かりやすく解説していきます!

1. 「自分の部屋だけ」では済まない?自動火災報知設備(自火報)の連鎖

民泊や旅館業の申請において、最もネックになりやすいのが「自動火災報知設備(通称:自火報)」の設置要件です

マンションやビルの一室を借りてこぢんまりと民泊を始めようとする場合、「自分の部屋の中にだけ、家庭用の小さな火災警報器をつければいいや」と思われている方がとても多いです。実は、ここに大きな落とし穴があります。

建物の規模や、他の部屋の状況によっては、「建物全体(全館)」に大規模な自動火災報知設備を入れなければならない連鎖が発動してしまうのです。

具体的には、建物の延べ床面積や民泊の割合によって、以下のようにルールが変わります。

※前回のセミナー資料より
  • 延べ床面積が500㎡を超える建物の場合: 建物全体に自火報の設置が必要になります。
  • 延べ床面積が300㎡以上500㎡以下の建物の場合: 他の部屋にすでに民泊があり、民泊として使う部分が建物全体の「1割」を超えると、建物全体に自火報の設置が必要になります。
  • 延べ床面積が300㎡未満の建物の場合: 原則として民泊部分に「特定小規模施設用自動火災報知設備」という、比較的簡易的な設備を設置すればOKとなることが多いです。

既存の建物に「火災報知器らしきもの」が元から付いていても、それが民泊・旅館業の要件を満たせない住宅用の警報器である可能性は大いにあります。賃貸物件の一室で始めるのに、ビル全体のオーナーさんや管理組合を巻き込んで、建物全体に何百万円もかかる消防工事をするなんて、現実的には不可能ですよね。

だからこそ、物件の契約前には必ず管轄の消防署へ行き、過去にどういう消防の届出が出ている建物なのか、自分たちがやろうとしている規模で建物全体への連鎖が起きないかを事前相談することが重要になります。

2. 知っておかないと本当に怖い、ビル一室での「複合用途」の罠

先日のセミナーの質疑応答でも、参加者の方からこんな切実なご質問をいただきました。

「400㎡のビルで、自分が民泊として使うのは建物全体の1割未満です。それなのに消防署から『下の階に飲食店が入っているから、建物全体に自火報が必要』と言われてしまいました。これって本当ですか?」

結論から申し上げますと、本当です

消防法では、不特定多数の人が出入りするスナック、飲食店、物販店などが入っている建物を「特定複合用途防火対象物」として厳しく審査します 。 この場合、民泊として使う部分がいくら小さく(1割未満に)抑えられていたとしても、飲食店などの「他の特定用途の面積」も含めて合算されてしまうため、結果として「建物全体への自火報設置」を求められるケースがよくあるのです

一見、立地が良くてポテンシャルの高そうな雑居ビルの一室であっても、他の階にどんなテナントが入っているかによって、自分への「消防法の飛び火」が変わってきます。ビル型の物件を検討する際は、建物全体のテナント構成にもしっかり目を光らせてくださいね。

3. オシャレな「吹き抜け」「メゾネット」に立ちはだかる竪穴区画の壁

内見に行った際、開放的な「吹き抜け」があったり、1階と2階が内階段でつながっている「メゾネットタイプ」の物件を見つけると、デザイン性が高くてテンションが上がりますよね!!

ですが、そういう物件を見た瞬間に、私はにこにこしながらも、心の中では少し遠い目をしてしまいます😇。

なぜなら、3階建て以上の建物や、吹き抜け・メゾネットのように上下階が繋がっている構造の場合、消防法や建築基準法で「竪穴区画(たてあなくかく)」や防隔・防扉の設置が必要になるパターンが非常に多いからです

これはざっくり言うと、「火災が発生したときに、避難経路である階段に煙が回らないように、防火扉や不燃材料の壁で区画を形成しなさい」というルールです。

既存の一般住宅で、最初からこの竪穴区画が完璧に形成されていることは極めて稀です。いざ後から区画形成の工事をしようとすると、デザイン性が損なわれるだけでなく、工事費用が想像以上に嵩んでしまうため、非常にハードルが高い「強敵」となってしまいます。

4. 適合が難しいときの裏ワザ?「引き算の事業計画」という選択肢

「せっかく見つけた3階建ての戸建て物件なのに、竪穴区画の形成が難しくて旅館業は諦めるしかないのかな……」

そんな風に絶望しかけたとき、諦める前に試してほしいのが「引き算の事業計画」という現実的な対応策です

例えば、3階建ての建物全体で旅館業を通すのが難しい場合、発想をガラッと変えて「3階部分は使用せず、1階と2階のみを民泊(住宅宿泊事業)として届け出る」というアプローチがあります

こうすることで、3階建て以上の重い要件を回避しつつ、1階と2階のスペースを活かして安全に事業を開始することができます。

法律のルールはガチガチで曲げることはできませんが、こちらの「事業計画のほうをルールの枠内に合わせて変形させる」という柔軟な姿勢を持つことで、ボツになりかけた物件を救世主のように蘇らせることができるケースもあるのです。

おわりに

2回にわたって、建物のスペックや消防法という、少し耳の痛いハードル高めの話をしてまいりました。 正直に申し上げますと、行政書士になってから、この複雑な法律や自治体ごとの細かい見解の違いと向き合っていて、「毎日楽しい!」と思ったことは一度もありません(笑)。重圧との戦い、しんどいことも連続の日々…。

それでも、皆さんが物件を契約して「取り返しのつかない場所」まで進んでしまう前に、私の持つ知識でブレーキをかけたり、「全体がダメでも、この方法ならいけそうです!」と別のルートをご案内できるなら、この仕事を選んだ意味があるのかなと思っています!

正直なところ、インテリアの選定も集客の仕組み作りも、やってみると楽しいことばかりではないですよね。だからこそ、行政との複雑な調整といった「プロに任せられる部分」はうまく外注して、自分が本当にリソースを割くべき業務に集中する。

そういう賢い時間の使い方も、事業をスムーズに軌道に乗せるためには大いにアリだと思います!
ですので!大いに!ご依頼のご連絡をお待ちしております!!!

以上、鈴木のコラム第3回「消防法・間取りの罠編」でした!
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう……🙌。

鈴木莉帆

筆者

鈴木莉帆

5年間のBAR経営を通じて、接客や店舗運営の現場を経験。 開業1年目でコロナ禍に直面したことをきっかけに、先行きへの危機感から新たな分野を切り拓こうと一念発起し、行政書士資格を取得。 現在は民泊届出・旅館業許可をはじめとする宿泊施設の許認可支援を中心に取り扱い、これまでに100件以上の宿泊施設の許可取得に関わってきた。現場感覚を活かしながら、初心者の方にもわかりやすい実務的なサポートを心がけている。

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